ダイコンがたくさん穫れた。
前回もダイコンのことを書いたけれども、今がちょうど旬の時期なので、今回もダイコンの話。土の中に埋まっていたダイコンをひとつひとつ引っこ抜いていき、すらっとした姿に歓声を上げ、期待とは裏腹なちっちゃなダイコンにちょっと首を傾げ、足を組んだようなカタチのセクシーダイコンに笑いがおこる。
さて収穫したダイコンをどうやっていただこう?いろいろと思いを巡らせる。
ダイコンというのはなかなか主役になれない、ちょっとかわいそうな野菜だと思う。
お刺身のパックを見てみても、刺身のツマとしての扱い。メインの刺身の引き立て役だ。
ちょっとこじゃれたレストランやバーでいただく野菜スティックも、キュウリやニンジンと一緒で、決してダイコンがセンターに立つことはない。
大根おろしをすってみても『ポン酢+大根おろし』『納豆+大根おろし』と、主演『大根おろし』となる例は少ない。
しかし、この寒い時期こそ、ダイコン選手が一気に先頭に躍り出る。
中でも一番の活躍を見せるのが『おでん』だ。
家で食べるおでんでもいい。コンビニのおでんでもいいし、おでん屋のおでんでもいい。さまざまなおでん種が鍋の中で踊っている中で、真っ先に口にするのが
「ダイコン!」ではないだろうか。
なんならもう、おでん屋に掲げてあるメニューなど目もくれない。コンビニおでんの鍋の中をのぞいたりもしない。真っ先に「ダイコン!」と注文している。
出汁のしみこんだ熱々のおでんをほおばる姿を想像し、口いっぱいに広がる風味と、口の中で溶けていくようなダイコンの食感、そしてあふれる出汁のうまみ。
ダメだ。こうやっておでんのダイコンについて書いているだけで唾液がたまってくる。
そんなわけで、先日、収穫したダイコンをさっそくおでんにしようとキッチンに立ってみた。
少し厚めにダイコンを切っていき、丁寧に皮をむき、面取りまでして、出汁がよくしみ込むよう、表面に十字に包丁を入れる。
えぐみを消すために下茹でもして、いざ、おでんの出汁の中に投入。グツグツ煮込んでから火を止めて味をよくしみ込ませていく。それから時間をおいて寝かせ、食べる前にもう一度火にかけて、熱々になったところを勢いよくほお張る。うむ。美味い!いや、熱い!
今、口の中に火傷を負っている。そしてなぜか、ダチョウ?楽部のこと(もしくは片岡鶴太郎さんのこと)を思っている。
(2021.12.10:コラム/遠藤洋次郎)