第56話 本音を言えば…

 先日、近所の小学校から『職業講話』をお願いしたいと、そんなお話をいただいた。

6年生の子どもたち100人の前で、私の仕事について、内容はもちろん、やりがいや大変なこと、どうしてその仕事をしようと思ったのか、など30分ほどのおしゃべり。

 私のメインの仕事は『声』を使った仕事なのだけれども、6年生に向けて『農業』についても少し触れたいと思い、シナリオの中に畑仕事についても盛り込んでみた。

 結論から言うと、今自分は『声』の仕事と『畑』の仕事と二刀流で頑張っていますと、話題の大谷翔平選手の活躍に絡めて話をし、6年生に向けてもいろんなことに興味を持ってチャレンジしてほしい。そんなメッセージを伝えたつもりだったけど…う~ん。届いたかな?

 30分しゃべって、残りの15分ほどは質問タイム。子どもたちからたくさんの手が上がり、たくさんの質問を受けた。その中には農家の仕事についての素朴な疑問もいくつか。

「畑仕事の楽しさはどんなところですか?」「畑仕事の大変なところは何ですか?」

「ぶっちゃけ儲かりますか?」などなど。

素直な6年生の子どもたち、ここは神対応を心がけよう!そう思って私も素直に子どもたちの質問と向き合った。でも思い返してみると自分の答えはなんだか優等生な答えだったな…と後悔がつのる。なので、今日はこのコラムで自分の本音を記しておこうと思う。

【畑仕事の楽しさについて】

優等生回答「僕のやっているのは体験型の農作業なので、参加者の皆さんと楽しくおしゃべりしながら土いじりをしているのが楽しいです」

本音「参加者の来ない日は、基本、ひとりぼっちで作業しているのでさみしい。野菜たちや農機具に話しかけていて、それを楽しいと感じているさみしい男です。」

【大変なところ】

優等生回答「夏の暑い日は本当に大変。ここのところ夏は異常な暑さになるんで、早起きをし、涼しい時間に畑に行っているので、早起きが大変です」

本音「暑いのも大変だけど、草刈りして腰を痛めたり、誤って車の中に鶏糞をぶちまけたり、収穫間近の野菜をネズミに食われたりで、もう散々です。」

【儲かりますか?】

優等生回答「工夫やアイデアで美味しい野菜をたくさん育てている農家さんは儲かっているかもしれないですね。でも儲けることももちろん大事だけど、自分の育てた野菜を収穫していろんな人に食べてもらうのは素直に嬉しい。やりがいがあるなと感じますよ。」

本音「儲かってたらみんなやってるんじゃない?疲れるし、お金も時間もかかるし…」

6年生の子どもたちはこのコラムを読まずに、私の優等生回答をしっかりと受け止めて、土に触れること、野菜を育てることの魅力を感じてもらいたい。

そして自分の保身のために言うけれども、優等生回答も本音である。

(2021.12.24:コラム/遠藤洋次郎)

第55話 完成形がわからない

『聖護院かぶ』とはどんなカブなのか?

京野菜の一種で、京都の伝統野菜。大きくなると重さが5キロほどにもなる、日本最大級のカブである。と紹介されてあった。

そんな『聖護院かぶ』を育ててみよう!と、この秋に種まきし、生長を見守っていた。

 芽が出て葉が伸び、白いカブの姿が土から顔をのぞかせる。うんうん順調に育っている。

 少しずつ風が冷たいと感じるようになったころ、そろそろ収穫してもいいのじゃないか?と思い、そっとカブの葉に手を伸ばしたところ、一緒に農作業をしていた農園の参加者の方から、「まだですよ!まだ大きくなりますよ!」と諭された。

 スーパーや青果店に並ぶカブの大きさはこんな感じだし、土の上に顔を出しているカブの白も十分美しい。食べごろかと思ったのだが、まだまだ大きくなるという。伸ばした手を慌ててひっこめた。

 実はこの『聖護院かぶ』がどんなカブなのか知らなかった。姿を見たこともないし、もちろん食べたことがない。

つまり、このカブの完成形がどんなものなのか分からないのである。

 参加者といっしょに土いじりをする旧PORT農園では、今まで見たことも食べたこともない野菜を興味本位で植えてみることがある。

以前も『コールラビ』という野菜の種をまいてみたのだが、参加者の誰一人として、この野菜がどんなかたちで、どんなふうに生長し、どうやって食べるのか知らなかった。もちろん『コールラビ』の完成形がどんなカタチで、どのタイミングが食べごろで、いつ、どうやって収穫するのか、まったく分からなかった。

この『コールラビ』、見た目も球体からニョキニョキと触手を伸ばした地球外生命体のような形をしていて、何とも奇妙である。収穫したものを持ち帰ってもらったが、参加者の皆さんがどのようにして食べたのか、その報告は私の耳には届いていない。

 そして『聖護院かぶ』である。先月、晴れの日に収穫してみた。

 引っこ抜いてみて驚いたのはその大きさ。本当に子どもの頭くらいの大きさ、直径15センチから20センチくらいのまん丸なカブがいくつも採れた。土から引っこ抜いたとき、掌に伝わるズシリとした重さも感動もの。参加者の皆さんからも歓声が上がった。

 実際、みそ汁の具として食べやすい大きさにカットした『聖護院かぶ』を食べてみたけれども、風味、食感ともに普段食べているカブと同じくらい、いやそれ以上に美味であった。

 今まで見たことも食べたこともない野菜を育ててみる。それもこの農園での『挑戦』として、これからも続けてやっていきたいと思う。来年は何を育ててみようかな?

(2021.12.15:コラム/遠藤洋次郎)

第54話 冬の主役

 ダイコンがたくさん穫れた。

 前回もダイコンのことを書いたけれども、今がちょうど旬の時期なので、今回もダイコンの話。土の中に埋まっていたダイコンをひとつひとつ引っこ抜いていき、すらっとした姿に歓声を上げ、期待とは裏腹なちっちゃなダイコンにちょっと首を傾げ、足を組んだようなカタチのセクシーダイコンに笑いがおこる。

 さて収穫したダイコンをどうやっていただこう?いろいろと思いを巡らせる。

 ダイコンというのはなかなか主役になれない、ちょっとかわいそうな野菜だと思う。

 お刺身のパックを見てみても、刺身のツマとしての扱い。メインの刺身の引き立て役だ。

 ちょっとこじゃれたレストランやバーでいただく野菜スティックも、キュウリやニンジンと一緒で、決してダイコンがセンターに立つことはない。

 大根おろしをすってみても『ポン酢+大根おろし』『納豆+大根おろし』と、主演『大根おろし』となる例は少ない。

 しかし、この寒い時期こそ、ダイコン選手が一気に先頭に躍り出る。

中でも一番の活躍を見せるのが『おでん』だ。

 家で食べるおでんでもいい。コンビニのおでんでもいいし、おでん屋のおでんでもいい。さまざまなおでん種が鍋の中で踊っている中で、真っ先に口にするのが

「ダイコン!」ではないだろうか。

 なんならもう、おでん屋に掲げてあるメニューなど目もくれない。コンビニおでんの鍋の中をのぞいたりもしない。真っ先に「ダイコン!」と注文している。

 出汁のしみこんだ熱々のおでんをほおばる姿を想像し、口いっぱいに広がる風味と、口の中で溶けていくようなダイコンの食感、そしてあふれる出汁のうまみ。

 ダメだ。こうやっておでんのダイコンについて書いているだけで唾液がたまってくる。

 そんなわけで、先日、収穫したダイコンをさっそくおでんにしようとキッチンに立ってみた。

 少し厚めにダイコンを切っていき、丁寧に皮をむき、面取りまでして、出汁がよくしみ込むよう、表面に十字に包丁を入れる。

 えぐみを消すために下茹でもして、いざ、おでんの出汁の中に投入。グツグツ煮込んでから火を止めて味をよくしみ込ませていく。それから時間をおいて寝かせ、食べる前にもう一度火にかけて、熱々になったところを勢いよくほお張る。うむ。美味い!いや、熱い!

 今、口の中に火傷を負っている。そしてなぜか、ダチョウ俱楽部のこと(もしくは片岡鶴太郎さんのこと)を思っている。

(2021.12.10:コラム/遠藤洋次郎)

第53話 土の中では…?

 ダイコンのシーズンがやってきました!

 いよいよ本格的な冬野菜の収穫シーズン。畑には美肌のダイコンが地中からひょっこり首を伸ばし、どんどん太くなっています。

 あくまでも、外から目で見た感じはそんな感じ。

 でも、このダイコンたち、はたして土の中ではどのように育っているのか?

掘り出してみないことにはわからない。

 毎年ダイコンを植えているけれども、そのうちの何本かは、自分の思いとは裏腹な「?」というダイコンが採れる。

 外から見れば、太くて丸くて、首の部分が少し青みがかかっていて、見るからに見事なダイコン。きっと地中深くにまでスラッと伸びた、美脚なダイコンが「ズボッ」と音を立てて抜けてくれるに違いない。そう思っているから、慎重にダイコンの首の部分に手をかけて、気合を入れて引き抜こうとする。でも、気合は空回り。イメージしていたものとはかけ離れた、丈の短いダイコンがいとも簡単に抜けてしまう。

 こんなに葉っぱを青々と茂らせているのに。こんなに丸くて太い首すじが顔をのぞかせているのに。なんで?なんで?

 原因はいろいろ考えられる。土の耕し方が甘く、地中の土が固いと深くまで伸びない。土の中の栄養分が足りない、などなど。

土の中に石が混じっていたりすると、根っこがその石にぶつかって分かれ、まるで人間の足のような姿になってしまうことがある。私はそれを「セクシーダイコン」と呼んでいるのだが、そんなダイコンが出てきたときには思わず笑みがこぼれる。でも、本音を言えば、丸々と太っていてスラッとした姿のダイコンを採りたい。

 私がやっている週末の体験農園では、参加者の皆さんと一緒に楽しくダイコンを育てている。毎週畑にやってきては、「先週よりも大きくなってる!」と、日に日に大きくなっていくダイコンの姿にビックリし、

「あとどのくらいで収穫できるか。ここの畝のダイコンは来週あたり収穫できるかな?」

などと言って、収穫の日を心待ちにしている。

 参加者の皆さんも、土の中でダイコンたちがどのように育っているのか興味津々。どんな料理にして大根を美味しくいただこうか、夢を膨らませている。

 そしてダイコンの収穫の時には、あちこちからいろんな声が上がる。

「おお!でかい!すげえダイコンが抜けた!」

「ん?なんだ?足が生えてるぞこのダイコン…」

はたして今年のダイコンは土の中でどんなふうに育っているのか?

今年も参加者の皆さんからいろんな声が上がるのを楽しみにしている。

(2021.12.03:コラム/遠藤洋次郎)

第52話 ハクサイの中に潜んでいます

 ハクサイの収穫がスタート!

夏に植えたハクサイが大きくなって、ぎゅっと身も締まり、昨年以上の良い出来のハクサイが穫れました。

 今年のウチのハクサイはしっかりと結球し、大きさもラグビーボール大に成長。頭の部分をグッと手で押してみると、ずっしりとした感触が伝わってくる。このずっしりとした感触が身のしまっている証拠。さぁ、今夜は鍋とまいりましょうか!

 スーパーの店頭にも、鍋スープのコーナーが充実してきた。そんな光景を目にすると、

「ああ冬なんだな」と思うのだけれども、昨今は鍋スープの種類の多さに驚く。

定番のちゃんこ鍋、キムチ鍋。変わり種のカレー鍋、チーズ鍋、豆乳鍋。

魚介出汁のきいた鍋、塩麹を使った鍋。味噌、塩、しょうゆ、とんこつスープと、どれも美味しそうで目移りしてしまう。

 いろいろな味を試してみたけれども、今回はハクサイにピッタリの鍋スープがいい。

今回選んだのは味噌ベースのスープ。ニンニクの風味も効いていて食べれば体が温まる。ハクサイをメインに豚肉、ニンジン、豆腐。そこに油揚げと春雨を入れたい。ついでに缶ビールを1本。

 家に着くなり鍋を用意し、さっそく味噌ベースの鍋スープを投入。味噌の風味も漂ってくるが、それ以上にニンニクの香りが沸き立っている感じがする。まぁ、今日はもう誰とも会うことはないから、口がニンニク臭くなるのも構わない。

煮えにくい野菜から鍋に入れていき、豚肉、豆腐を投入。

 そしてメインのハクサイ!

 丸々1個使うにはちょっと量が多いので、必要な量の葉を1枚1枚丁寧に取っていき、食べやすい大きさにカットしていく。

1枚、1枚とはいでいく中に、いましたね。腹ペコアオムシ。

 あまり農薬を使わないようにと思っているけれども、油断していると葉っぱが全部アオムシに食べられてしまう。その対策にと、苗を植えるときに多少の殺虫剤を使っている。その効果もあって葉っぱの食べられる被害は少なかったけれども、アオムシが一匹、葉っぱの陰に潜んでいた。

 ほんとに小さな小さなアオムシ。出てきた瞬間に「おっ」と思わず声が出てしまう。こっちも驚いたけど、向こうも驚いたに違いない。

寒くなってきたから葉っぱのスキマに隠れてぬくぬくとしていたのだろう。見つかった瞬間にくねくねと体を動かしてもがいている。

 と、結局アオムシの話になってしまったので、鍋の感想はまたの機会に。

(2021.11.19:コラム/遠藤洋次郎)

第51話 芋ほりは楽しい

 今日は、先日行った芋ほり大会の模様をご紹介。

 芋ほりのタイミングはなかなか難しい。

 蔓から葉っぱがたくさん伸び、元気な様子は外から見てわかる。でも実際の芋は土の中。土の中で芋たちがどのくらい大きくなっているのかは、掘り出してみるまで分からない。

 ふと、昨年のダイコン不作のことを思い出す。

 土から顔をのぞかせている部分は、葉も青々と茂り、首の部分も大きくなっている。

 葉っぱの様子を見ながら、今だ!と言うタイミングで引っこ抜いてみたけれども、ダイコンは簡単にスポッと抜けてしまった。

土の中ではそんなに大きくなっておらず、背丈の短いものばかり。

「ダイコンを植えたはずなのに、出てきたものはカブみたいだな……」

 原因はいろいろ考えられる。土の栄養が足りていなかったとか、土が固かったとか、土に潜む菌や微生物が生育を妨げていたのではないか?とか。

 ダイコンいっぱいのホクホクおでんを楽しみにしていたのだけれども、これだとおでんは夢のまた夢。美味しくいただいたけれども、あの時の落胆ぶりやいかに。残念な気持ちばかりが膨らんでいた。

 さて、芋はどうだろう?昨年のダイコンのように、掘り起こしてみたけれども何もなかったなんてことになってはいないか?

 イロドリのスタッフの皆さんも、お手伝いに来てくれる人たちも、そして、子どもたちも、期待に胸を膨らませているに違いない。

 そしていざ、芋畑へ。

スコップを片手に子どもたちが畑に散らばり、丁寧に土を掘っていく。

するとどうだろう、あちこちから子どもたちの歓声が聞こえてきた。

「あった!」「ここにいる!」「うおお!でけえ!」「キャー虫っ!」

明るく元気な声。

「こんなでかいのとれたー!」

がんばって掘り出した芋を両手に抱えながら、見せに来てくれる子もいる。

和気あいあいとして雰囲気で芋ほりの作業は続いたけれども、次第に真剣に芋と向き合い寡黙になる子どもも。

そして大人たちも慣れない土いじりに悪戦苦闘。

吹き出す汗をぬぐいながらたっぷり1時間。出てくる出てくるたくさんの芋、芋、芋。

 ありがとうサツマイモ。子どもたちの喜ぶ顔を見て、ホッと胸をなでおろす私。頑張って育ててきたかいがありました。

そして素直に思う。芋ほりは楽しい!

(2021.11.12:コラム/遠藤洋次郎)

第50話 長靴の思い出

 今年の春に買った農作業用の長靴に穴が開いてしまった。

 ホームセンターにずらりと並んだいろんな種類の長靴。その中でも今回は中ぐらいよりちょっと高めの長靴を買ってはいていたのだけれども、残念ながら1年もたなかった。

 ぬかるんだ畝の中を歩いてみたり、暑い日も寒い日も、風雨にさらされても耐えてきた長靴は、確かに消耗品なのかもしれない。

でもこの1年、ともに土の中で戦った戦友みたいなものだ。

 劣化が早いのは、屈伸したりして長靴に皺のよるところ。足首のところだったりつま先のところだったり、負荷のかかるところは生地の損傷が激しい。

 はじめは穴の開いていることに気がつかないのだけれども、水を撒いているときに靴下が濡れていたり、長靴を脱ぐと土や砂がポロポロと落ちてきたりすると、どこかに穴が開いている。調べてみると小さな亀裂が数か所できていた。

 穴あきの長靴には苦い思い出がある。

 田植えをする前のまだ冬の寒い時期。近所の農家さんたちといっしょに田んぼに水を引く用水路の清掃をする。用水路に投げ込まれたゴミを拾い上げ、大きなスコップで用水路の中のヘドロや土をかき出していくのだ。

 小雪の舞う季節だった。

 大きなスコップを持って用水路に行き、水の残る用水路の中に足を踏み入れた瞬間、冷たい水が長靴の穴から入ってきて靴下に染みてきた。

 長靴に穴が開いていることなど気づかなかった。よく見るとホントに小さな穴が開いていて、そこから冷たい水が流れ込んできた。

 靴下は濡れ、長靴の中にどんどん水が溜まっていく。

「冷たい冷たい冷たい……」

念仏を唱えるかのように唇を震わせながら、

「よし、今日はこのへんで止めにすっか!」

と言う、リーダーの号令がかかるのをじっと待つほかなかった。

「今年もご苦労様でした~」

と言いながら清掃の後はあったかい缶コーヒーで労をねぎらい、田植えのシーズンに思いを馳せる。しかし、このときばかりは缶コーヒーのぬくもりなど微々たるもの。用水路の水の冷たさに足の指さきの感覚もマヒしている。

『風呂に入りたい。湯船に飛び込んでいきたい!』

 帰宅してお風呂に浸かった時に、足先に血が流れていくのを感じた。

 少なくとも用水路の清掃の前には、新しい長靴を用意しておこうと思う。

(2021.11.05:コラム/遠藤洋次郎)

第49話 季節の移り変わり

ナスとズッキーニ、オクラの畝を片付けて、今年の夏野菜の収穫は終了。

まだ少しトマトとピーマンが穫れそうなので残してあるけれども、夏の盛りの頃と比べたら実も小さなものばかり。

今年も美味しい夏野菜をたくさん収穫できました。

 エダマメの植わっていた場所にはハクサイやカブダイコンが緑の葉っぱを広げている。

 畝を片付けていると、今年の春からのいろいろなことが思い出されてくる。

 ナスやピーマンを種から育てようとポッドに種をまいたのだけれども、一向に大きくならず、結局苗を買ってきて植えたこと。

 ここの畝はエダマメ。ここの畝もエダマメ。ここにもエダマメ。と昨年以上にエダマメ畝を増やして、収穫の時期である夏の盛りを待っていたこと。

そして、ネズミか何かに食い荒らされてしまったこと。

 カボチャの蔓が長く長く伸びていっていたこと。

 水を撒くのを怠った日。熱中症の危険にさらされながら草刈りをした日。

キンキンに冷えたサイダーの美味しさ。

 日焼けするのも気にせずにTシャツ姿で耕運機を動かしていたのに、今は長袖の作業着を着なければ風邪をひいてしまいそうになる。畝を吹き抜ける風もすっかりと冷たくなってしまった。

 農作業をするようになってから季節の変化を肌で感じることが多くなった。サラリーマンの頃よりももっと敏感に、空気の感じや木々の葉っぱ色づき具合、空の色の変化を感じる。

外で作業しているから当然なのかもしれないけれども、季節の移り変わりを感じられるのも、畑仕事をしていての醍醐味なんじゃないかな?とも思う。

 これからどんどん寒さが増してくる。寒くなってくるとハクサイはどんどん甘みを増してくるというし、ダイコンも大きくなっていくから、これからの時期も楽しみ。タマネギやニンニクも冬を越えて大きく美味しくなってくる。

美味しい鍋料理に思いを馳せて冬の寒さを待つことにしよう。

 と言いながら、夏生まれの私は冬が大の苦手。

 嫌だよ、布団の中でぬくぬくしていたいよ。早起きなんてムリムリ。朝の6時なんてまだ日が昇ってきてないじゃん。夜だよ夜!あと1時間寝る。いや、少なくともあと30分!

 こうして自分に甘い人間が、布団の中にくるまって動かないでいる。

そんな季節がやってきます。

(2021.10.29:コラム/遠藤洋次郎)

第48話 リベンジなるか?

 ニンジンの栽培に毎年チャレンジしているけれども、毎年失敗している。

 去年もおととしも植えてはみたものの、芽が出てくるだけで、期待していたニンジンは姿をあらわさなかった。今年も春に植えてみたけれども、生い茂る雑草の中に紛れてしまって、ついにはその姿を見失ってしまった。

 以前購入した家庭菜園の本にニンジンのつくり方が載っていたので、それを見ながら種をまく時期、種のまきかた、水の管理、間引きの時期、一つ一つ確認したけれども、やっぱりできない。どうしたものか。

 そんなわけで、畑で実践する前に、今年はプランターで試しに育ててみよう!と、去年ニンニクを育てていたプランターの土を再利用し、ニンジンの種をまくことにした。

 ニンジンは万能野菜だ。煮ても焼いても炒めても美味しいし、新鮮なものはそのまま野菜スティックとしてかじりついてもイケる。

そして何と言ってもニンジンの葉っぱの天ぷらは絶品だ。

 お店で売られているものは葉っぱを切った状態で売っているけれども、葉っぱは捨てるにはもったいない。油で揚げて、そこにパラパラッと塩をふったシンプルな天ぷら。それだけでお酒がすすむ。

 実はニンジンの葉っぱの天ぷらを食べたのは新潟に来てから。ご近所さんからいただいた採れたてのニンジンで「葉っぱはね~、天ぷらにして食べると美味しいよ~」と言われ実践してみた。味も食感もまったく想像していなかったから、口に含んだ時の「シャワッ」という食感とジワっと口いっぱいに広がってくる風味に思わず目を丸くしてしまった。

「いつか自分でもニンジンを育てて、心ゆくまで葉っぱの天ぷらを食べたい!」

ニンジンそのものよりも葉っぱを採ることが、ニンジン栽培の目的になってしまっている。

 用意したプランターに肥料を入れ、スコップでかき混ぜる。土の中に空気を入れ、肥料もまんべんなくいきわたるように準備する。そこに小さなニンジンの種をパラパラと巻いていき、土はかぶせる程度。でもニンジンは発芽率が非常に低く、温度や湿度の影響を受けやすい。家庭菜園の本にも難易度は「難しい」に分類されている。

 夏の終わりにまいた種がようやく芽を出してきた。芽を出さないところもあるし、期待していたほどの芽は出てきていないけれども、それでもニンジンたちも頑張って芽を伸ばしている。プランターにも生えてくる雑草を指でつまんで除いていきながら、「がんばって大きくなれよ~」と声をかける。今年こそ!リベンジだ!

 で、じっくりとプランターをのぞいて見ると、おやおや?ニンジンではない芽がひとつ。

土に残っていたと思われるニンニクが、小さな芽を出していた。

(2021.10.22:コラム/遠藤洋次郎)

第47話 たのむぞ!サツマイモ!

 いよいよ明後日はイロドリ畑プロジェクトの芋ほり大会!

 今年の春植えたサツマイモをみんなで掘ってみよう!と言うことで、僕もワクワクしているけれども、ちょっと天気が心配。

 ずっと放置されていた畑、いわゆる『耕作放棄地』を何とか復活させたい!そんな僕の思いと、畑仕事を通して地域の魅力を発信していきたいと言うイロドリプラスの思いが合致して、昨年末くらいから「どうしよう?何をしよう?どんなものを育ててみよう?」と検討を重ねてきました。

 固くなってしまった土を、耕運機を動かしてほじくり返していく作業。マルチがけをして、そこに用意したサツマイモの苗を植えていく作業。ときおり様子を見ながら雑草刈りの作業。子供たちを交えて芋ほりをしていく作業を夢見ながら、およそ6か月がたちました。

 苗が土に根を張らずに、枯れてしまうものもいくつかありましたが、秋になって蔓の伸びも勢いを増し、見た目は立派なサツマイモ畑。一体どんなイモが土の中にいるのか?期待も膨らんできます。

 農業検定のテキストに書かれてあったことに、全国の耕作放棄地の面積は今、富山県の面積と同じくらいあり、その面積は年々増えているといいます。もちろんこれには農業をする人の高齢化、後継者不足の問題もあるし、畑を手放してそこに何か建物を建てると、緑の面積が減っていって、地球温暖化の問題にもつながっていく。

 芋ほりに参加する子どもたちにはそんな大仰な話でなくても、農業の抱えている問題についてちょっとでも感じてもらうことができたらいいな~と思っています。

いや、子どもたちには純粋に芋ほりを楽しんでもらいたい。

サツマイモはなどのイモ類は地中で育つので、外から蔓を見てもどんなイモが育っているのかは確認できない。実際に掘ってみるまで、イモの姿は見られない。カッチカチになってしまった土だけれども、果たして明日はどんなイモが出てくるのか?

思えばこの夏、雑草だらけの畑に愕然としながらも、鎌を片手に、いざ草むらの中に飛び込んでいき、汗をかきかき、蚊に刺されながら雑草を刈っていった日々を思い出します。

ラジオで高校野球の中継を聴きながら、「せめてこの試合が終わるまでは雑草を刈っていこう……」そう心に決めて一畝しっかり草刈りをしたり、あまりの暑さに途中で断念したり。

自分なりに面倒を見て、じっくり生長を見守ってきたイモたちだけに、気持ちは子どもを持つ親のよう。

明後日、子どもたちの笑顔があれば、きっとこの思いは報われるんじゃないかな?

たのむぞ!サツマイモ!

(2021.10.14:コラム/遠藤洋次郎)