第38話 サイコーの一杯

仕事終わりのビールは格別なものがある。

がんばった自分へのご褒美。はじける泡とあの苦みが一日の疲れを吹き飛ばしてくれる。

「く~この一杯。サイコーだね!この一杯のために生きているようなもんだ」

グビグビと喉を鳴らしながら流し込んでいくあの黄金の液体は、なんとも言えない爽快感をもたらしてくれる。特に暑い夏は、キンキンに冷えた生ビールがたまらない。そこにエダマメが並んでいれば何も文句はない。最高の至福の時間である。

暑い暑い夏。農家の皆さんは朝早く涼しい時間から活動をはじめる。

かく言う私も、この時期は早起きになる。日が高くなるに連れて、気温も上がり、熱中症の危険も高まる。

陽に当たっているだけでも疲れがたまる。8時、9時くらいまで外仕事をしているともう汗ぐっしょりで、着ているシャツは肌にへばりついてきて、なんとも気持ち悪い。

午前中で作業をきりあげ、うちに帰ってシャワーを浴び、着替える。

午後にこれと言った予定がなければ、ビールを飲んでそのまま昼寝へと流れていきたい。

そう言えば一度、近所の農家仲間と「畑仕事を早めに切り上げて、近所のスーパー銭湯に行って汗流してビールを飲もう!」という話になった。

汗を流して露天風呂に浸かり、風呂上がりに飲んだジョッキ一杯の生ビール。そのまま銭湯の休憩室でごろ寝。ほどよい酔いと疲れが、ごろりと横になった畳に吸い込まれていくような感覚があり、本当に最高の時間だった。

とは言っても、昼から酒を飲むというわけにもいかない。午後にも何かしらの用事が入っているし、人と会ったりするのに酒を入れていくわけにもいかない。

う~ん。でもやっぱり、あの『爽快感』を味わいたい!

農作業をするようになってから、炭酸飲料の消費が増えた。

コーラやサイダーなどの甘い炭酸飲料も好きだけれども、最近だと味のないただの炭酸水もペットボトルで飲めるようになったので、それらを好んで飲むようにしている。

ビールの代わりに…とまではいかないけれども、汗をかいた後に飲む炭酸飲料も格別にうまい。炭酸のはじける泡の刺激が胃の腑にしみわたっていく。

キンキンに冷えた炭酸飲料を喉の奥に流し込み、真夏の太陽、青い空、高い高い入道雲に向かって僕は叫ぶ。

「く~この一杯。サイコーだね!この一杯のために生きているようなもん(げっぷ)」

(2021.07.16:コラム/遠藤洋次郎)

第37話 おぞましい蝶屋敷

耕作放棄地を何とかしようとはじめた、イロドリ畑プロジェクト。サツマイモをたくさん植えたけれども、この時期、雑草もすくすくと生長している。

サツマイモの蔓がしっかり伸びるように、雑草を刈って蔓の道を整えたつもりだけど、長雨の季節。きっとまた驚くほどの雑草がのびるに違いない。

雑草を刈っていると、いろいろな生き物が飛び出してくる。

ついこの間までオタマジャクシだったであろう小さなカエルたちがぴょこぴょこ。

小さなクモが素早く畑を横切っていく。

そして、カマキリやバッタの赤ちゃんもいる。

カマキリやバッタのカタチをしているけれども、まだ小さく、緑の色もつけていない。

そういえば小学生の時、クラスメイトのK君がカマキリの卵を見つけたと言って学校に持ってきて、そのまま道具箱の中でふ化し、教室中にカマキリの赤ちゃんが大量発生した事件があった。

畑にもたくさんのカマキリの赤ちゃんがふ化して、のびのびと暮らしている。

植物にとっても、昆虫にとっても、畑はパラダイスなのだ。

今年、耕作放棄地となっているところにジャガイモも植えてみた。

種芋を買ってきて、植え付け用に半分に切り、やがて芽を出し、青々とした葉っぱを広げていたけれども、急に元気がなくなった。葉っぱは黄色くしおれ、くたびれている。

原因は虫だった。

殺虫剤もまかず、ここ何年も作物を育てていなかった畑は、昆虫たちの住処として最高の環境が整っていたのだ。

その虫たちが、小さなイモを食べ、養分を吸収し、すくすくと生長している、まさにその最中。イモを掘り返してみたら土の中には丸々と太った芋虫もいた。

ひらひらと畑を舞うチョウチョも、食物を荒らす害虫だ。

あおむしの話は以前にこのコラムで紹介したけれども、チョウチョの舞う畑は、すなわち、葉物野菜を食いつぶすチョウチョの幼虫、はらぺこあおむしたちの楽園なのだ。

チョウチョは敵。そんな思いを抱きながら、『鬼滅の刃』を見ていた時、蝶屋敷なるものが出てきた。主人公の炭次郎たちが傷をいやす治療場所であると同時に、機能回復訓練を行う訓練所でもある。そこにたくさんのチョウチョが舞っている。

つまり、ここには腹を空かせたあおむしがいっぱいいる…と想像すると…なんともおぞましい屋敷である。

(2021.07.09:コラム/遠藤洋次郎)

第36話 気づいたこと

ひとまず今年の夏野菜の種まき、苗植えは終了。

エダマメ、トマト、ナス、ピーマン。カボチャにズッキーニ、オクラ、サツマイモ…。エダマメ、トマト、サツマイモは品種の違うものをいくつか。

あとは大きくなっていく様子を見ながら、朝夕の水まき、芽かき、雑草取り、頃合いを見はからって肥料をまいたりと、また天気とにらめっこをしながらの農作業の日々。

とは言っても、自分の中での繁忙期は峠を越えたので、ここ最近のちょっとしたスキマ時間は散歩やジョギングにいそしむようにしている。なんとも健康的な生活!

私の暮らすところは畑や田んぼの広がる田園地帯。田んぼのあぜ道を散歩することもあるし、川沿いのジョギングコースにはあちこちで農作業をする方の姿が飛び込んでくる。

いろいろな野菜の植わっている畑の間を走るのも心地がいい。朝夕の涼しい時間、緑に囲まれた中で歩いたり走ったりするのは、東京にいたころは経験できなかったことだ。

最近の散歩の楽しみは、ほかのお宅の畑を観察しながら歩くこと。

「ここんちのカボチャは大きくなっているな~」「この畑ぜんぶエダマメが植えてある!」「これはトマトだな、キュウリだな、ピーマンだな、ナスだな…」

視界一面に広がる農家さんの見事な畑。家庭菜園を楽しんでいるお家の庭には、ミニトマトが青く小さな実をつけている。その光景もなんとも可愛らしく、ほほえましい。

そんな光景を目で楽しみながらポテポテ歩いていると、あることに気がついた。

「野菜の葉っぱを見ただけで、それがなんの野菜かわかる自分がいる!」

農家の人にとっては、それは当たり前のことかもしれないけれども、あちこちの畑に伸びる葉っぱを見ただけで、それがトマトなのか、ピーマンなのか、わかるようになっていたのだ。

きっと農業に携わっていなければ、歩いていても走っていても見過ごしていた景色だろう。農業をやっていたからこその“気づき”が、そこにはあった。

目を開けていても、見過ごしていることのなんと多いことか。

散歩を終え帰宅してみると、玄関先のアスファルトの隙間に、雑草が生えているのに気がついた。そんな雑草のびるアスファルトの隙間から、他とは違うひょいと伸びた一本の芽。

「これは…?トマトか?」。

去年プランターで育てたトマトの実が落ちて、その種がアスファルトの隙間から芽を出してきたようだ。

これは世に言う『ど根性トマト』か…。気になるから、ちょっと様子を見てみよう。

(2021.07.02:コラム/遠藤洋次郎)

第35話 ナメクジの怪

エダマメをたくさん植えました!

今年、ようじろう農園にこしらえた畝の半分はエダマメ。「この畝のエダマメは8月に入ったら食べごろ」「こっちの畝のエダマメはお盆の時期に」「そしてこの畝のエダマメは9月の頭には収穫できるかな?」そんな空想に浸りながら、エダマメの生長を眺めている。

先日、育苗用のトレイに撒いたエダマメの芽が伸びてきたので、いよいよ畑に植え替えようとトレイを眺めてみた。すると、4枚あるうちのトレイの一つが、どうも出てきている芽の数が少ない。発芽の悪いエダマメだったのかな?とも思ったけれども、よく見ると、出てきた芽の頭の部分が食べられている。

「あっ!これはナメクジの仕業だ!」

育苗トレイは地べたに置かず、エダマメ用にと用意した台の上に載せ、ナメクジ対策をしたつもりであったが、それも効果なし。やつらはどこからともなくはい出てきて、美味しいエダマメのやわらかな頭の葉っぱの部分を食べつくしていたのだ。

とは言っても、日中、ナメクジの姿は見当たらない。生い茂る雑草の間をのぞいて見ても、ほじくり返した土の中を見ても、ナメクジの姿はどこにもないのである。

「犯人はナメクジに決まっている。しかしその姿はない。幻か?幽霊か?」

その日の夕方。

水まきをしようとエダマメの育苗トレイを見てみると、犯人を見つけた!やはりナメクジ。

しかも一匹ではない。葉っぱの陰に、茎の部分に。トレイの間、土から顔をのぞかせている者。あっちにもこっちにもナメクジ、そしてナメクジ!ああ、ナメクジ!

まだ子どもであろう小さなものから、丸々と太ったメタボな奴もいる。

その姿に「うわっっっ!」と思わず声がでてしまった。

ナメクジは夕方、涼しくなるころに動き出す習性がある。夕方の時間がナメクジにとってのゴールデンタイム。

「終業時間になると急に元気になる、サラリーマンの頃の自分みたいじゃないか。」

とまた急に、ナメクジに対してシンパシーを感じた。

とりあえず、ナメクジ除去の薬剤をまき、今まさにエダマメ芽の美味しいところを食べようとしているナメクジは現行犯逮捕。割りばしでつまんで捨てる。でも、すべてつまみ切れるものではない。本当に、一体何匹のナメクジがトレイの上を這っていただろうか?

ところであなたは、ナメクジを素手でさわれます?私はさわれます。

(2021.06.25:コラム/遠藤洋次郎)

第34話 夏の天敵

農家の皆さん、外仕事をされる皆さん、これからの時期は熱中症に注意が必要です。お互いに気を付けていきましょう。

私も真夏の炎天下、ひとり作業をしていた時に突然暑さを感じなくなって、その夜熱にうなされたことがあります。たぶんあれが熱中症の症状だったのではないかと思っているのですが、ここ最近の夏の暑さはタダものじゃありません。こまめな水分補給と休息、塩分補給も忘れずに行きましょう。

と、この時期になるといろいろと注意しなければならないことがある。

一つは蚊。畑でも半袖短パンで過ごしたいけど、肌の露出は蚊の格好の標的。長袖長ズボン、首元を覆う日よけのついた帽子をかぶっても、スキマを狙ってあいつらは襲撃してくる。

首筋、おでこ、素肌の部分には容赦ない。眉毛のあたりを刺されたときにはお岩さん状態。

農園の参加者には「それはハチの巣を駆除するかっこうなのではないか?」と思うほどの全身防護服、プラス、携帯用の蚊よけ機器をぶら下げてくる方もいる。

虫よけスプレーだけでは事足りず、それだけの完璧な防護で臨まねばならない。

かゆみ止めは常に持ち歩き、私も作業をするときは蚊取り線香を吊り下げ式のホルダーに入れ、常に線香の煙にいぶされている。

そしてもう一つ、この時期の天敵は紫外線である。

夏の紫外線よりも6月の紫外線の方が強いという。実は私も今年になってすでに一度、腕の皮がむけている。

日よけの帽子をかぶっても、どんだけSPFの値が高いクリームを塗ってみても、完全完璧に遮断できるものではない。私が頬を赤くしているのは照れているからじゃなく、日に灼けたからだ。

今年に入って、コロナ太りを解消すべくダイエットを始めた。目指せ細マッチョ!と目標は掲げているけれども、積年の皮下脂肪や内臓脂肪はそう簡単にそぎ落とせるわけでもないので、細マッチョまではいかないまでも、この夏『脱いでも恥ずかしくない体』を目指そうと頑張っている。海やプールに行って服を脱いでも恥ずかしくない体になりたい!

鍬をふるえば腕が鍛えられる。草刈りのために立ったりしゃがんだりすれば、これはスクワットだ!と思いながら、素敵なボディラインを目指して今日も畑に出かける。

炎天下、畑を耕す。汗をかきTシャツ姿になる。腕が日に灼けて黒くなっていく。

さて今日は夕方からお出かけだからとシャワーを浴びようとバスルームに行き、着ていたTシャツを脱ぐと、どうだろう、Tシャツの日焼けの跡がバッチリ残っている。

やっぱりこの夏、裸になるのはハズカシイ。

(2021.06.18:コラム/遠藤洋次郎)

第33話 楽に農作業?

先日、後学のためにと、雑誌に載っていたとある農家さんのインタビュー記事を読んだ。

細かな内容は忘れてしまったけれども、インタビューの中にあった「『楽』をしなければ農業なんて続かない」そんな言葉が心に引っかかった。

「そうだよな~農業って楽じゃないもんな~。だから農業をやってみようと思う人も少ないわけだし、つらい、しんどい、泥まみれの仕事だもんな…つらいと続かないもんな…」などと思いながら読んでいたのだが「いやいや文明は、人類は、楽をするために発展したのではないか?」と急に「文明」だの「人類」だのと大層なことを思いはじめた。

鉄を発見し、これは土を耕すのにイイっていうんで鍬が作られ、でも鍬で耕すのが大変だから、牛や馬を使おってみよう、その後エンジンが開発されてすごい馬力で早く深く耕すトラクターが誕生し…。そうなのだ!人類の発展と進歩は、どうやったら楽ができるか。その楽をするための叡智の結晶なのだ!そんなことを思っていた。

おそらくここ最近の暑さで、少し脳が溶けていたのかもしれない。

トラクターを使えば畑を耕すのも楽になる。でもトラクターは高い。

除草剤をまけば草刈りの手間が省ける。でもたくさんの除草剤をまくのも問題がある。

楽をするにもコストがかかるし、楽をしすぎるのもまた問題なのかもしれない。

ここ最近の農作業のメインはブドウの剪定(せんてい)である。

まぁ放っておいてもブドウは勝手に伸び、花を咲かせ実をつけるのだけれども、実を大きくし、丸々とした美味しいブドウを作るためには、ほかのブドウたちには犠牲になってもらわなければならない。今、小さく実をつけているブドウを少し切り取って、残っている実に栄養をいきわたらせるようにする。

この作業がつらい。

一本の木から伸びたブドウは頭上に枝葉を伸ばし、実をつける小さな花も見上げたところに咲いている。この花を手を伸ばしてハサミで一つずつ切っていくのだが、どうしたことか、肩が上がらないのだ。

「これが、ひょっとして…五十肩というものなのか?」

先日テレビを見ていたら、ブドウ農園を営む農家さんが、ブドウの剪定(せんてい)が楽になる、脚立のような台座を発明していた話題が紹介されていた。ブドウを剪定(せんてい)するのにちょうどよい高さのところで、背もたれに腰を預けて安定させ、サクサクとブドウの剪定をするその発明品を見て、素直に「これ欲しい!」と思った。

そう。楽に農作業をするための、ブドウ農家さんの叡智の結晶が、そこにはあったのだ。

(2021.06.11:コラム/遠藤洋次郎)

第32話 農作業スタイル

自分はそんなにおしゃれじゃないけど、一応の身だしなみには気をつけているつもりだ。

ただ、なかなかドレスコードが分からず、『ラフな格好で』と言われると、何を着ていけばよいのか分からない。

襟付きのシャツの方がいいのか?とりあえずジャケットは着ていくか。まぁスーツで行けば問題ないだろう。そう思ってスーツ姿でスキーのゲレンデに行ってしまったこともあるし、重い荷物を運び出す肉体労働をしたこともある。明らかに場違いな格好だった。

おしゃれかどうかは置いておいて、何を着るかで気持ちにスイッチが入ることがある。ビジネススーツを着れば身の引き締まる思いがするし、体を動かすときスポーツウエアに身を包むと「よし動くぞ!」と言う気になる。

農作業に特化したファッションもある。

『農作業を楽しく、カッコよく』そんなうたい文句で、サロペットやつなぎの上下、日よけの帽子や長靴まで、おしゃれなものが紹介されている。

「いやいや、どうせ泥で汚れるんだし、シミのついたシャツと学校ジャージでいいじゃん。誰に見せるわけでもないし、汚れてもいいかっこうで十分。農業におしゃれはいらないね。」

なんて思っていたのだけれども、ようじろうおじさん、最近色気づいてきた。

農作業着を着ているモデルさんがカッコイイのだ。

その手のサイトを見ていると、機能性はもちろん、見た目にもおしゃれな作業着が多く紹介されている。ちょっと前までは何となく野暮ったい感じに思えた農作業着も、すらっとしたモデルさんが着ているとあら不思議、カッコイイのだ。

そんなわけで、リーズナブルなお値段のサロペットと、青色のつなぎを購入してみた。

足元の裾の部分がだいぶダブついているけれども、そこは長靴を履けば隠せる。

そんな自分の姿を鏡に映してみたけれども、あら不思議、野暮ったい。

無精ひげをはやしたまま、麦わら帽子をかぶって、鍬を手に持ち、もう一度鏡を見る。

「うん、この姿はどこかで見たことがある…。なんだろう、この既視感。その昔、お菓子売り場にならんでいた…そうだ!カールおじさんだ!」

モデルさんのそれとはだいぶ違うけれども、見た目はすっかり農夫である。

最近はこのスタイルがお気に入りだ。畑仕事へのスイッチが入る。

何だか気持ちがのらないときは、カタチから入るということも大事だと思う。

そんな農作業のスタイルを、『ようじろうファーマーズフォーム』と呼んでいる。

(2021.06.04:コラム/遠藤洋次郎)

第31話 恵みの雨

新潟でラジオをはじめてすぐの頃、番組の中で新潟の天気をお伝えすることになった。

気象台から届く最新の天気情報をまとめ、天気概況、各地の天気、降水確率、気温、注意報などをお伝えする。

はじめは書かれてある原稿を読むことで精いっぱいだったけれども、慣れてくると、雨雲の動きから今後の雨の様子なども話せるようになった。

ちなみに、気象台からは『21時から24時』『3時から6時』などと時間で表記された原稿が届く。『21時から24時』の間は「夜遅く」、『3時から6時』となっているものは「明け方」とそれぞれ変換し、「夜遅くにかけて降水確率が高くなります」とか「明日の明け方までには雨が上がるでしょう」と言い換えていく。

そんな天気予報をお伝えしているときに、大失態をしてしまったことがある。

「明日も新潟県内は各地で晴れの良い天気。雨の心配はありません!」そう言ったところ、

「『雨の心配』ってなんだ!世の中には雨が降ってほしいって思っている人もいるんだぞ!」

と怒られた。まさしく、番組ディレクターからの雷が落ちたのだ。

でも、雨が降ると濡れるし寒いし、傘を持ち歩くのもメンドクサイ。もしもその日が楽しみにしていた運動会や遠足だったら、中止になってしまう。デートをするにしても雨だとテンションが上がらない。雨が降るよりも晴れていたほうがいい。そう思っていた。

畑仕事をしていると、いつもこの先の天気とにらめっこだ。

晴れのタイミングを見計らって、土を耕したり、種を植えたり、水をあげたりする。天気もコロコロ変わるので、いくら事前にスケジュールを組んでみてもその通りに行かないことの方が多い。

貴重な晴れの日に一気に作業を進めなければならないのだが、晴れの日ばかり続くと

「ああ、水をあげなきゃならんな…雑草を刈らなきゃならんな…」と憂鬱な気持ちになる。

「雨が降れば、朝水やりに行かなくてもいいし、そうすればゆっくり寝てられるし、夜更かしできるし、少しくらいの深酒も…いいよねぇ?」

天気予報を眺めながら、いつ雨が降るのか、いつゆっくり寝てられるのか、いつ深酒ができるのか、そんなことを期待している自分がいる。

雨は自分にとっても恵みの雨。「雨の心配が…」などと言っていたのに、まさに自分自身が『雨が降ってほしい!』と望んでいる人の側にいるのだ。

しかし昨今の雨の量や多いし、吹く風も強い。農園でも雨の被害、風の被害が多くなっている。温暖化の影響かもしれないけれど、ほどよい晴れとほどよい雨であってほしいと思う。

(2021.05.28:コラム/遠藤洋次郎)

第30話 ひとりでできるもん?

前に書いたコラム『マルチがけの職人』を読んだという農家の方から、

「ようじろうさん。私一人でマルチがけやっていますよ」と声をかけられた。

真っ黒いビニールのシートを3人一組になって、畝の上に慎重に張っていく。そんなことを書いていたコラムだったが、そのマルチがけを一人でやっているというのだ。

「ああ、マルチがけの機械ってありますもんね?」と返事をしてみたが「そんなものは使っていない」と言う。

果たして一人でマルチがけができるのか?気になったのでいろいろ調べたところ、一人でやるマルチがけの方法を解説した動画が見つかったので、さっそく見てみた。

動画に登場したのは職人オーラ漂う貫禄のあるおじさん。農作業ファッションもしっかり板についている。

まずは土を耕し、畝を立てる。時間短縮のため早送りの映像になっていたけれども、何とも手際が良い。みるみるうちにまっすぐの畝が出来上がる。

そしていざ、マルチがけ。

おじさんはロール状になっているマルチをスルスルスルと伸ばしていき、ふわっと畝の上へかぶせてみせた。そして畝の両サイドから土を集めてマルチを固定させていく。

これぞ職人技!見事である。

では実際にやってみよう!と、私も幅60センチ、長さ3メートルほどの畝にマルチのシートをかぶせてみた。

用意したマルチにはまん中に線が入っていて、その線を中心にマルチを伸ばしていけば、畝にまっすぐに延びたみごとな“マルチがけ”ができるはず、である。

ところがこれがうまくいかない。

マルチは風にあおられるわ、中心線はズレていくわで、いびつに曲がっている。

なんと言うか…一人でのマルチがけはできた。できたけれども、決して見栄えのいいものではなかった。協力者があって初めてみごとなマルチがけができるのだと痛感したのである。

農家の方から、一人でやるマルチがけの方法も教えてもらった。

少しずつマルチを伸ばして、畝の幅に合わせて大きく足を開き、しわにならないようピンと張ったマルチを両足でしっかり踏んで固定させ、足元に重しとなる土を載せていく。

なるほど。時間はかかるけれども、一人でできないこともない。

でもなんだか畝の幅が狭くなっているような気がする。

なぜ畝の幅が狭くなってしまったのか?

大きく足を開いてみても大きく広げられない自分の足の短さが原因であることに、さっき気づいた。

(2021.05.21:コラム/遠藤洋次郎)

第29話 イロドリ畑で

農業コラム『ミドリのイロドリ』の連載からおよそ7か月。
はじめは農業に関するあれこれ思ったことを書いていこうと、ほんの軽い気持ちで始めたのだが、気持ちの奥底にはこのコラムの執筆を機に「何か楽しいことができないものか?」そんな野心がうごめいていた。

ミドリのイロドリを書いている動機はいくつかある。

一つは、自分が農作業を通して感じたこと、思ったことをアウトプットしていく場所であると言うこと。年を重ねるごとにいろいろと忘れることも増えてくるので「こんなことをやっていた」「こんなことを思っていた」という備忘録としての役割。

もちろん、農業の楽しさ、大変さを伝えたい気持ちもある。

ひょんなことから始めた農業。まだまだ素人である。日々、悪戦苦闘する中にも楽しさ、面白さを見つけ出し、読んでくださる方々と共感したい。ちょっとでも共感してもらえて、「自分も土いじりしてみたいな…」と思ってくれる人がいてくれたらいいな、と思っている。

なにせ孤独な農作業。この楽しさ、大変さを分かちあえる仲間が欲しいのだ。

そして、ミドリのイロドリを通して『土いじり仲間』を増やすこと。

そんなわけで登場しました『イロドリ畑』

農園の一角でサツマイモづくりにチャレンジ!

実は昨年からイロドリ畑をつくってサツマイモを栽培してみよう!というプロジェクトを進めておりました。

サツマイモの栽培にと準備した畑の一角は、耕作放棄地になっていて、雑草生い茂る荒れ地状態。この場所を何とかよみがえらせたい。ここはひとつ、荒れ地の方が栽培に適していると言われているサツマイモに頑張ってもらいたい。そんな期待を寄せている。

「ああ、紅はるかちゃんを早く植えたい!生長していく様子を見守りながら、最後はみんなで芋ほりをしたい!」

ウズウズした気持ち、はやる気持ちもあるけれども、野菜作りには時期がある。「思い立ったら即行動!」というわけにもいかず、その時が来るのをじっと待たなければならない。

そして5月。いよいよその時がやってきました。

サツマイモの苗を探しに、園芸店やホームセンターをめぐること3件。ようやく見つけ出した紅はるかの苗を購入し、いざ!

果たしてイロドリ畑でのサツマイモ栽培、どのような結果になるのか?楽しみである。

(2021.05.14:コラム/遠藤洋次郎)