第4話 見てくれはアレだけれども

なんともいとおしい「地球外生命ダイコン」を掘り出した前回のお話でしたが、葉っぱの部分はおひたしにして、皮の部分はきんぴらに、そして実の部分はお味噌汁の具になり、すべて美味しくいただきました。

ただ、このダイコンが売り物になるか?といわれると、厳しい。
スーパーに並んでいるダイコン、青果店に並んでいるダイコン、隣の畑のダイコン。
眺めてみれば見事にスラっとした美人さんばかり。

ダイコンの絵を描いてみよう!
といわれたら多くの人は、「¥」こんな感じの絵を描く。
「ξ」こうは描かない。
「ξ」なダイコンは商品としては失敗だ。

失敗の経験は、もちろん次に生かさなければならない。

土づくりや種の蒔きかた、種を蒔くタイミングやその後のケアなど、ネットで調べてみたり、本を読んでみたり、近所の農家さんに聞いてみたりする。
もちろん、自然相手なので、次にうまくいくという保証はない。

なんで?どうして?水が足りない?台風のせい?
畑仕事に携わるのであれば、このトライ&エラーは毎年の起こりうることである。
おかげさまで、私の農園に参加しているみなさんは、採れた野菜を見ては大笑いする。

「ダイコン曲がってる(笑)」
「ズッキーニでかっ!(笑)」
「ハクサイに青虫いた!(笑)」
「ミミズ!(笑)」
「ナメクジ!(笑)」
みんな笑っている。

採れた野菜は持ち帰り、みなさんそれぞれ調理して、次に会う時にはどうやって食べたかの話題で盛り上がる。

「見てくれはアレだったけど、炒めたらおいしかった。」
「見てくれはアレだったけど、パスタに和えてみた。」
『見てくれはアレ』であっても、口に入ればどれも美味しい。
ましてや自分たちが育ててきたものとなると、味わいもひとしおだ。

どんなカタチの野菜であっても『失敗』はない。
と、いつだったか近所のおじさんがそう言ってくれた。
なので私も「美味しく食べられれば、立派なお野菜!」と思うことにしている。

でも、農園の管理人としては『見てくれはアレ』を何とかしたいものだけれども…。

(2020.11.13:コラム/遠藤洋次郎)