第13話 目覚めの冬

コロナの影響もあってか、家でじっとしている時間が多くなった。

「ちゃんと自粛しているんだよ。うんうん」
と自分に言い聞かせているけれども、手帳を見ても、司会の仕事やセミナーの仕事、イベントの予定は書きこまれていない。
春に向けての農作業の準備を…と思っても、農閑期である。
畑を耕すわけにもいかないし、種を植えたり苗をつくるのにも、まだその時期じゃない。種カタログを眺めているといっても、ひねもすそんなことしてるわけにもいかない。
しかも寒くて布団から抜け出せない。
体を動かすのもメンドクサイし。
ああ、春が来るまで寝ていたい!

春に芽を出し、夏大きくなる野菜の種たちは、この寒い時期は何をしているのだろう?
ふと、そんなことを思って調べてみた。
種というものはよくできたもので、自分が芽を出す条件が整っていないとずっと寝ている。
水がなくても、酸素がなくても、種は種の状態でじっとしている。
『休眠状態』というのだが、この休眠というのは、種が生き、生長するために種自らが身につけた能力。

そして冬の間、気温の低い日が続くと、種はこの休眠状態から目覚める。そう。種を眠りから覚ますのは“寒さ”なのだ。

種A「いやぁ…寒いねぇ。起きた?」
種B「うん。起きた起きた。いや、ほんと寒いわ~」
種A「お前さんはいつ頃芽を出すんだい?」
種B「気温が20℃くらいになった頃がちょうどいいかな~」
種A「それくらいだと暖かくてちょうどいいね」
種B「その頃は春だね~」

寒い時期の種は、じっとしているように見えて実は目覚めている。
何もしていないように見えるけれども、種の中では来るべき時に向けての準備をしている。
来るべき時に、根を張り、芽を出し、花を咲かせ、実をつけるために。
そのために必要なのが“寒さ”なのである。
人間だってそうだ。ずっとぬくぬく生きてはいられない。
寒くてつらいと思える時期があるからこそ、成長していくのだ。

さあ、ようじろう、目覚めよ!今こそ布団から抜け出す時なのだ!

(2020.01.22:コラム/遠藤洋次郎)