第25話 背後で奴らが狙っている…

いよいよ種まき、苗植えのシーズン到来!

春の陽気に包まれて、畑に吹く風も心地よい。体も動くし、かく汗も気持ちいい。
畑を耕しながら、ここにエダマメの種をまいて、ここはトマトの畝だな。この辺にナスを植えて、そうそうオクラはここに、と夏の収穫に思いを馳せる。

実は、畑にまいた種の全部が全部芽を出すわけではない。
なので、ある程度育てた『苗』をつくって、それを畑に植え替える。

園芸店に行くとトマトやキュウリの苗が売られているが、ある程度育っているので、芽を出すまでの面倒を見なくてもいいし、「芽が出るのかなぁ?」という心配もいらない。根付いてしまえばその後の管理も楽になる。

私も今、トマトの苗を作っている。

ポットに土を入れて種をまき、水を撒いて、じっと様子をうかがう
種をまいてから10日くらいたった頃、ようやく小さな芽が出てきた。

この芽が出てくるまで、心配な日々が続くのだが、土の中から小さな緑が顔をのぞかせてくると、思わず顔がほころんでしまう。

土いじりをしていると、こんな小さな変化がうれしい。

以前、エダマメの苗をつくろうと、種をポットに入れて日の当たるところに出しておいた。

エダマメの種はつまり、大豆である。

ポットの中で水を含んだ大豆が、栄養を吸い取り、あたたかな土の中に包まれて、やがて芽を出し根を張って、葉っぱを広げて、頃合いを見て畑に移し替える。

ひと通り育苗ポットにエダマメを植えて、ちょっと用事を足しに…と畑を離れた。

離れた時間は30分くらい。

用事を終えて畑に戻って来ると、なにやら、エダマメポットのまわりが騒がしい。

「ピーピーチュンチュン」聞こえてくるのは鳥のさえずり。

「ああああ!」思わず叫び声をあげる。

ポッドに植えたばかりのエダマメの種を、鳥たちがついばんでいるのだ!
エダマメの種と言っても、ポッドの中に入っているのはふやかした大豆である。
水を含んで柔らかくなった美味しい豆である。油断も隙もあったもんじゃない。

今年もエダマメの苗を作ろうと思っている。
苗づくりの作業をしている私の背後にいる数羽の鳥たち。

その姿はヒッチコックの映画『鳥』を彷彿とさせる。

(2021.04.16:コラム/遠藤洋次郎)