第31話 恵みの雨

新潟でラジオをはじめてすぐの頃、番組の中で新潟の天気をお伝えすることになった。

気象台から届く最新の天気情報をまとめ、天気概況、各地の天気、降水確率、気温、注意報などをお伝えする。

はじめは書かれてある原稿を読むことで精いっぱいだったけれども、慣れてくると、雨雲の動きから今後の雨の様子なども話せるようになった。

ちなみに、気象台からは『21時から24時』『3時から6時』などと時間で表記された原稿が届く。『21時から24時』の間は「夜遅く」、『3時から6時』となっているものは「明け方」とそれぞれ変換し、「夜遅くにかけて降水確率が高くなります」とか「明日の明け方までには雨が上がるでしょう」と言い換えていく。

そんな天気予報をお伝えしているときに、大失態をしてしまったことがある。

「明日も新潟県内は各地で晴れの良い天気。雨の心配はありません!」そう言ったところ、

「『雨の心配』ってなんだ!世の中には雨が降ってほしいって思っている人もいるんだぞ!」

と怒られた。まさしく、番組ディレクターからの雷が落ちたのだ。

でも、雨が降ると濡れるし寒いし、傘を持ち歩くのもメンドクサイ。もしもその日が楽しみにしていた運動会や遠足だったら、中止になってしまう。デートをするにしても雨だとテンションが上がらない。雨が降るよりも晴れていたほうがいい。そう思っていた。

畑仕事をしていると、いつもこの先の天気とにらめっこだ。

晴れのタイミングを見計らって、土を耕したり、種を植えたり、水をあげたりする。天気もコロコロ変わるので、いくら事前にスケジュールを組んでみてもその通りに行かないことの方が多い。

貴重な晴れの日に一気に作業を進めなければならないのだが、晴れの日ばかり続くと

「ああ、水をあげなきゃならんな…雑草を刈らなきゃならんな…」と憂鬱な気持ちになる。

「雨が降れば、朝水やりに行かなくてもいいし、そうすればゆっくり寝てられるし、夜更かしできるし、少しくらいの深酒も…いいよねぇ?」

天気予報を眺めながら、いつ雨が降るのか、いつゆっくり寝てられるのか、いつ深酒ができるのか、そんなことを期待している自分がいる。

雨は自分にとっても恵みの雨。「雨の心配が…」などと言っていたのに、まさに自分自身が『雨が降ってほしい!』と望んでいる人の側にいるのだ。

しかし昨今の雨の量や多いし、吹く風も強い。農園でも雨の被害、風の被害が多くなっている。温暖化の影響かもしれないけれど、ほどよい晴れとほどよい雨であってほしいと思う。

(2021.05.28:コラム/遠藤洋次郎)