第45話 イライラしてもしょうがない

9月中旬。陽射しには夏の名残があり、日中の最高気温は30℃近くまで上がるらしい。秋の風が吹き始めていると言っても、体を動かせばすぐに汗が噴き出てくる。

その日私は、タマネギの種の袋を眺めていた。

表には見事に丸々としたタマネギの写真。目指すはこれと同じ色、カタチをしたタマネギ。

そして裏を返すと、タマネギの栽培方法が簡単に説明されている。

9月中旬くらいから苗を育て、11月ぐらいに、芽が伸びたところで畑に植え替える。

なるほど。苗をつくるには今、このタイミングだ。

苗を育てるための小さなポットを用意し、土を入れ、種をまく。

タマネギの種は小さく、ちょっとでも風が吹けばすぐに飛んで行ってしまう。

作業は慎重に、丁寧に。細心の注意を払いながら種をまいていく。

同じ時期にまいたハクサイやチンゲンサイは1週間もたたないうちに芽を出し始める。ポットのところどころに小さな緑色の双葉が見えてくると思わず顔がほころんでしまう。

「うんうん。ちゃんと育っているな」

ところがタマネギは待てど暮らせど芽が出てこない。

今一度、タマネギの種の袋を見てみる。そこには発芽に適した温度が書かれてある。

『発芽の適温は15℃から20℃』

季節は秋とは言っても気温は軽く20℃を超えている。いや25℃を超え夏日となっている。

「種をまくのは9月の中旬。でも、種が芽を出すのに適した温度は15℃から20℃くらい」

———なんか、矛盾していないか?

タマネギは、とりあえず種は9月にまいておいて、気温が適温になると芽を出すって言うことで理解すればよいのだろうか?その辺、専門家の方に聞いてみたい。

そんな『?』を頭に浮かべながら、ジッと育苗ポットを眺めているところに、稲刈り作業をしていた近所の農家さんが声をかけてきた。

「何植えたの?」

「タマネギです」

「ああ、タマネギ。ウチもやってるよ!なかなか芽が出てこないからイライラすんだよね」

正直、芽が出てこないもんだから、少々イラっとしていたのも確かだ。でも、近所の農家さんも「イラっとしている」と聞いて、ちょっと安心した。

きっと効率よく育てる方法もあるんだろうけれども、畑仕事はジッとガマンの時も必要なのだと思う。

イライラしてもしょうがない。

(2021.10.01:コラム/遠藤洋次郎)