第48話 リベンジなるか?

 ニンジンの栽培に毎年チャレンジしているけれども、毎年失敗している。

 去年もおととしも植えてはみたものの、芽が出てくるだけで、期待していたニンジンは姿をあらわさなかった。今年も春に植えてみたけれども、生い茂る雑草の中に紛れてしまって、ついにはその姿を見失ってしまった。

 以前購入した家庭菜園の本にニンジンのつくり方が載っていたので、それを見ながら種をまく時期、種のまきかた、水の管理、間引きの時期、一つ一つ確認したけれども、やっぱりできない。どうしたものか。

 そんなわけで、畑で実践する前に、今年はプランターで試しに育ててみよう!と、去年ニンニクを育てていたプランターの土を再利用し、ニンジンの種をまくことにした。

 ニンジンは万能野菜だ。煮ても焼いても炒めても美味しいし、新鮮なものはそのまま野菜スティックとしてかじりついてもイケる。

そして何と言ってもニンジンの葉っぱの天ぷらは絶品だ。

 お店で売られているものは葉っぱを切った状態で売っているけれども、葉っぱは捨てるにはもったいない。油で揚げて、そこにパラパラッと塩をふったシンプルな天ぷら。それだけでお酒がすすむ。

 実はニンジンの葉っぱの天ぷらを食べたのは新潟に来てから。ご近所さんからいただいた採れたてのニンジンで「葉っぱはね~、天ぷらにして食べると美味しいよ~」と言われ実践してみた。味も食感もまったく想像していなかったから、口に含んだ時の「シャワッ」という食感とジワっと口いっぱいに広がってくる風味に思わず目を丸くしてしまった。

「いつか自分でもニンジンを育てて、心ゆくまで葉っぱの天ぷらを食べたい!」

ニンジンそのものよりも葉っぱを採ることが、ニンジン栽培の目的になってしまっている。

 用意したプランターに肥料を入れ、スコップでかき混ぜる。土の中に空気を入れ、肥料もまんべんなくいきわたるように準備する。そこに小さなニンジンの種をパラパラと巻いていき、土はかぶせる程度。でもニンジンは発芽率が非常に低く、温度や湿度の影響を受けやすい。家庭菜園の本にも難易度は「難しい」に分類されている。

 夏の終わりにまいた種がようやく芽を出してきた。芽を出さないところもあるし、期待していたほどの芽は出てきていないけれども、それでもニンジンたちも頑張って芽を伸ばしている。プランターにも生えてくる雑草を指でつまんで除いていきながら、「がんばって大きくなれよ~」と声をかける。今年こそ!リベンジだ!

 で、じっくりとプランターをのぞいて見ると、おやおや?ニンジンではない芽がひとつ。

土に残っていたと思われるニンニクが、小さな芽を出していた。

(2021.10.22:コラム/遠藤洋次郎)