第3話 必死で生きている

夏に植えたダイコンが、やんちゃに育っている。
葉は青々と茂り、首元も青く、そして朝露に照らされキラキラ輝く純白のボディ。
いざ、掘り出してみると…

「!!!???」

二股、三股。
いや、これはもはや、足のこんがらがった、ダイコンには程遠い「地球外生命体」である。

土の中に小石があったりすると、生長の途中で根が分かれていき、あたかもそれが人間の足のように見える。
白いおみ足は、美しい女性を連想させるので、
私はそれを「Sexy Daikon」と呼んでいるが、
今回のダイコンにはみじんもSexyさは感じられない。

その原因を自分なりに考えてみた。

夏野菜を育てるときに、畑にじかに種を蒔くよりも、一回、育苗ポットに種を蒔いて、苗をつくり、苗が育ってきたところで畑に植える。
これが割と成功したので、ハクサイやキャベツ同様にダイコンもポット苗を作ってみた。
ほどよく葉が伸びたところで畑に植え替えたのだが、育て方の資料などを後になって読んでみると、ダイコンなどの「根」を育てるものは、植え替え厳禁なのだそうな。

「ようし!下に根をのばすぞ!」
と思っていたことろに、急に土の環境が変わると、

「ん?どっちに根をのばしたらいい?こっち?それともこっち?」
と戸惑うのだろう。

「オレ、こっちに伸びていくから、お前こっちに伸びていってくれよ!」
そんなダイコンの思惑も感じられる。

と、こんなことを書いていたら映画にもなったマンガ「寄生獣」を思い出した。

地球外生命体が人間の体内に乗り移り、意思を持ち、人間世界をパニックに陥れるというマンガ。主人公に寄生した生命体「ミギー」は生き残るために主人公の右手と共存していく道を選んだが…

今回掘り出してきたダイコンを眺めていると、彼らも生きていくために、生長していくために、必死なんだと言うことをひしひしと感じる。

そして、必死で生きようとする姿は、何ともいとおしい。

(2020.11.06:コラム/遠藤洋次郎)