第11話 環境って大事

一度耕すのをやめてしまった土は、なかなか元に戻らない。

ウチの農園も、何年も手入れをしないでそのままほったらかしにしていたところなので、土は固く、水はけも悪い。たっぷりと水を含んだ畑は、一度足を踏み入れると、なかなか抜け出すことができない。

雪道で車がスタックしてしまい、立ち往生している。新潟で暮らしているとそんな光景をよく見るが、僕も以前、耕運機が畑の中でスタックしてしまい、泣きそうな思いをしたことがある。
土の質を改善することは目下の課題。
畑は、土と水と空気のバランスが大切なのだ。
海沿いの畑でスイカの栽培が盛んなのは、水はけのよい砂地がスイカの栽培に適しているから。逆にレンコンなどは水の中で育つので、水持ちのよい畑が適している。

野菜の種類によって、それぞれ適した環境というのがある。
野菜たちがすくすくと大きくなる環境。それを整えていくことも、農家の皆さんにとって大事な役割なのだ。野菜たちはとても素直だ。

種を蒔かれた畑の環境によって、葉を青々と茂らせたり、きれいな花を咲かせたり、実が大きくなったりする。もちろん中にはへそを曲げる野菜もいるかもしれないが、農家さんは種まきの前に畑の土づくりにいそしむ。

そして野菜たちはとても寡黙だ。

「お腹がすいた!」「水をくれ!」といって泣きわめくこともないが、葉っぱが枯れてしまったり、実のつきかたが悪くなってしまったり。農家さんは寡黙な野菜たちが発するサインを見逃してはならない。

いやはや。本当に、環境って大事だなぁ。

固い土、水はけの悪いウチの畑の野菜たちは、みんなやんちゃに育っている。
やんちゃな野菜も確かにかわいいけれども、丸くて赤々とした美しいトマト、すらっと伸びた美白のダイコン、粒のつまった黄金色のトウモロコシもつくってみたい。
目指すは、野菜たちが元気にすくすくと大きくなれる環境づくり。

そして僕も、新潟というこの土地の環境にどっぷりはまって、すくすくと大きくなっている。
美味しいお米に野菜、お酒。名物料理や名産品がたくさん。

そんなもんだから、たっぷりと栄養を吸い込んで(横に)大きくなっている。

※遠藤洋次郎氏ではありません

(2020.01.05:コラム/遠藤洋次郎)