春分の日。暦の上では春である。陽射しは春だけれども、まだ風はちょっと冷たい。
先日、耕作放棄地になってしまった畑に耕運機を入れてみた。
雑草だらけで、土も固く、耕運機の操縦もままならない。それでも何とか土をほじくり返すと、冬眠中であったのかもしれない、カエルが一匹ぴょこんと飛び出してきた。
こんなにカチカチの土の中でもいろんな虫たちもいたらしく、ほじくり返したそばから鳥たちがやってきて、なにやらついばんでいた。
さて、今回耕したこの畑で、今年は「サツマイモ」の苗を植えてみたいと思う。
というのも、サツマイモが非常にエンターテイメント性の高い作物だと考えているからだ。
幼稚園に通っていたころ、近所の畑に芋ほりにでかけた。
土の中からサツマイモの赤紫の肌が見えたとき、お宝を見つけたような感動があり、小さな手で土をかき出していくと、大小さまざまな芋がいくつも出てくる。
「うわぁ!サツマイモだ!」と無邪気に喜んでいたあの頃。芋ほりは宝さがしにも似た興奮が味わえる。そう、今年はサツマイモづくりを通して、この興奮を味わいたい!
サツマイモは何と言っても、栽培するのに手間がかからない。
肥沃な畑ではなく荒れたところでも十分に育つところも心強い。
その昔、日本を襲った飢饉の救世主であったことも忘れてはならない。
もちろん栄養もたっぷり。デンプンを多く含み、ビタミン、カルシウムも豊富。そして食物繊維を多く含んでいてお通じにもいい。
食べ方もバリエーションが多く、そのまま焼いたり蒸かしたりするだけで食べられる。
ご飯に混ぜてもいいし、味噌汁の具にもなる。カラッと揚げたサツマイモの天ぷら、大学芋。旬の時期にはサツマイモのモンブランと言ったスイーツもケーキ屋さんの店頭に並ぶ。
さらには、芋焼酎という美味しい酒にもなるのだから、サツマイモのポテンシャルは高い。
ちなみに、サツマイモにもいろいろな種類があって、代表的なものにホクホク系の「ベニアズマ」、しっとり系の「べにはるか」がある。
「べにはるか」はじっくり寝かせるとしっとり系からねっとり系に代わっていき、糖分が増えてより甘みが増す。今年はぜひ、この「べにはるか」をたくさん収穫してみたい。
(以下、ここからまたワタクシの妄想)
そして僕は、はるかとの甘い時間を過ごすのだ。ねっとりとからみ合う蜜月のひと時。
「はるかさん…僕は君とこうして(食べて)いる時間がとても幸せなんだ……ああ、はるか」
いかんいかん。エダマメが嫉妬してしまう。
(2021.03.19:コラム/遠藤洋次郎)