第21話 サツマイモのスゴさ

春分の日。暦の上では春である。陽射しは春だけれども、まだ風はちょっと冷たい。

先日、耕作放棄地になってしまった畑に耕運機を入れてみた。

雑草だらけで、土も固く、耕運機の操縦もままならない。それでも何とか土をほじくり返すと、冬眠中であったのかもしれない、カエルが一匹ぴょこんと飛び出してきた。

こんなにカチカチの土の中でもいろんな虫たちもいたらしく、ほじくり返したそばから鳥たちがやってきて、なにやらついばんでいた。

さて、今回耕したこの畑で、今年は「サツマイモ」の苗を植えてみたいと思う。

というのも、サツマイモが非常にエンターテイメント性の高い作物だと考えているからだ。

幼稚園に通っていたころ、近所の畑に芋ほりにでかけた。

土の中からサツマイモの赤紫の肌が見えたとき、お宝を見つけたような感動があり、小さな手で土をかき出していくと、大小さまざまな芋がいくつも出てくる。

「うわぁ!サツマイモだ!」と無邪気に喜んでいたあの頃。芋ほりは宝さがしにも似た興奮が味わえる。そう、今年はサツマイモづくりを通して、この興奮を味わいたい!

サツマイモは何と言っても、栽培するのに手間がかからない。

肥沃な畑ではなく荒れたところでも十分に育つところも心強い。

その昔、日本を襲った飢饉の救世主であったことも忘れてはならない。

もちろん栄養もたっぷり。デンプンを多く含み、ビタミン、カルシウムも豊富。そして食物繊維を多く含んでいてお通じにもいい。

食べ方もバリエーションが多く、そのまま焼いたり蒸かしたりするだけで食べられる。

ご飯に混ぜてもいいし、味噌汁の具にもなる。カラッと揚げたサツマイモの天ぷら、大学芋。旬の時期にはサツマイモのモンブランと言ったスイーツもケーキ屋さんの店頭に並ぶ。

さらには、芋焼酎という美味しい酒にもなるのだから、サツマイモのポテンシャルは高い。

ちなみに、サツマイモにもいろいろな種類があって、代表的なものにホクホク系の「ベニアズマ」、しっとり系の「べにはるか」がある。

「べにはるか」はじっくり寝かせるとしっとり系からねっとり系に代わっていき、糖分が増えてより甘みが増す。今年はぜひ、この「べにはるか」をたくさん収穫してみたい。

(以下、ここからまたワタクシの妄想)

そして僕は、はるかとの甘い時間を過ごすのだ。ねっとりとからみ合う蜜月のひと時。

「はるかさん…僕は君とこうして(食べて)いる時間がとても幸せなんだ……ああ、はるか」

いかんいかん。エダマメが嫉妬してしまう。

(2021.03.19:コラム/遠藤洋次郎)

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