第35話 ナメクジの怪

エダマメをたくさん植えました!

今年、ようじろう農園にこしらえた畝の半分はエダマメ。「この畝のエダマメは8月に入ったら食べごろ」「こっちの畝のエダマメはお盆の時期に」「そしてこの畝のエダマメは9月の頭には収穫できるかな?」そんな空想に浸りながら、エダマメの生長を眺めている。

先日、育苗用のトレイに撒いたエダマメの芽が伸びてきたので、いよいよ畑に植え替えようとトレイを眺めてみた。すると、4枚あるうちのトレイの一つが、どうも出てきている芽の数が少ない。発芽の悪いエダマメだったのかな?とも思ったけれども、よく見ると、出てきた芽の頭の部分が食べられている。

「あっ!これはナメクジの仕業だ!」

育苗トレイは地べたに置かず、エダマメ用にと用意した台の上に載せ、ナメクジ対策をしたつもりであったが、それも効果なし。やつらはどこからともなくはい出てきて、美味しいエダマメのやわらかな頭の葉っぱの部分を食べつくしていたのだ。

とは言っても、日中、ナメクジの姿は見当たらない。生い茂る雑草の間をのぞいて見ても、ほじくり返した土の中を見ても、ナメクジの姿はどこにもないのである。

「犯人はナメクジに決まっている。しかしその姿はない。幻か?幽霊か?」

その日の夕方。

水まきをしようとエダマメの育苗トレイを見てみると、犯人を見つけた!やはりナメクジ。

しかも一匹ではない。葉っぱの陰に、茎の部分に。トレイの間、土から顔をのぞかせている者。あっちにもこっちにもナメクジ、そしてナメクジ!ああ、ナメクジ!

まだ子どもであろう小さなものから、丸々と太ったメタボな奴もいる。

その姿に「うわっっっ!」と思わず声がでてしまった。

ナメクジは夕方、涼しくなるころに動き出す習性がある。夕方の時間がナメクジにとってのゴールデンタイム。

「終業時間になると急に元気になる、サラリーマンの頃の自分みたいじゃないか。」

とまた急に、ナメクジに対してシンパシーを感じた。

とりあえず、ナメクジ除去の薬剤をまき、今まさにエダマメ芽の美味しいところを食べようとしているナメクジは現行犯逮捕。割りばしでつまんで捨てる。でも、すべてつまみ切れるものではない。本当に、一体何匹のナメクジがトレイの上を這っていただろうか?

ところであなたは、ナメクジを素手でさわれます?私はさわれます。

(2021.06.25:コラム/遠藤洋次郎)