第40話 八月の朝の風景

朝は日の出とともに動き出す。

夏のこの時期、午前7時を過ぎると暑さで体がまいってしまう。びっしりと汗をかき、着ているシャツもパンツも長靴の中の靴下もびっしょり濡れている。

トマトやピーマン、ナスやオクラなど、実ったものは朝のうちに収穫。

でも一番の作業は草刈り。ちょっと目を離したすきに雑草が伸びている。刈ったそばからまた伸びているような、そんな錯覚を覚えるほどの勢いで雑草が伸びてくる。

除草剤を使えば一網打尽なのだが、周りに実をつけた野菜たちがあるので、除草剤も使えない。腰をかがめながら枝切りばさみを使ってチョキチョキと雑草を刈っていく。

この中腰の姿勢が腰に良くない。

ときどき伸びをして背筋を伸ばすのだが、そのたびに腰に鈍い痛みが走る。

そこに加えて、大量の汗。息も上がる。

さらに加えて、クモの巣があちらこちらに。クモは畑にいる虫たちを捕食するので無下に扱うこともできない。もちろん、私もクモの巣に引っかかる。足元の雑草に目を奪われていると、頭上のクモの巣に気づかず、頭に首筋に手に、クモの巣がまとわりついて危うく捕食されそうになる。

畑にはさまざまなクモがいる。大きな巣を作るもの、網を張らない地を這うクモもいる。

アオムシは大丈夫だけれども、どうもこのクモの姿かたちは見るとゾッとする。でも益虫なのであまり邪魔をしないように慎重に畝の間を歩くようにしている。

朝日を仰ぎながらの畑仕事は、なんだか体中にエネルギーが満ちていくような感じがする。陽の光が体に染みこんでくるような感じがして、体が目覚めてくる感じがするのだ。

でも、これも朝6時を過ぎると太陽光線は強くなり、陽の光が痛くなる。直射日光がジリジリと肌を刺すようで、陽に当たっているだけでも疲れを感じる。

汗をふきふき、時折水を飲みながら、雑草刈りを続けていく。

トマトが赤く色づいてきたり、ナスやピーマンが大きくなっていたりしているの一つ一つ眺めながら水やりをする。昨日の朝と比べてみても赤みが増しているもの、ふくらみが大きくなっているものが増えているのがうれしい。

「このトマトは今週食べごろになるな。こっちのナスはあと1日待ってみようか…」

そんなことを思いながら、トマトやナスの房を触ってみると、大きくなった実の重みが掌に伝わってくる。

これが私の、8月の朝の畑の風景です。

(2021.08.27:コラム/遠藤洋次郎)