第41話 この夏の悲しい出来事

夏野菜の収穫が落ち着いてきて、片付けとともに秋植え野菜の準備。

気持ちを切り替えて準備をと耕運機を動かしていくのだが……。

そう。気持ちの切り替えが必要なのである。

無心になって耕運機を動かしていると、ふと、「今年の夏野菜の失敗」が頭をかすめていく。

もちろん、天気のせいもあったと思う。

ここ最近の夏の暑さは酷暑と呼ぶにふさわしく、日中、炎天下での作業は決死の覚悟でのぞまなくてはならない(だから日中は作業しない)

また、降る雨も集中豪雨となって畝を水浸しにしてしまう。農作物が心配で雨の降る中、決死の覚悟で畑の様子を見に行く人もいる(危ないから私は行かない)

でも、天気のせいは半分言い訳で、もっとちゃんと面倒を見ていればと自責の念にかられるのだ。

カタチのきれいな大玉のトマトもいくつか採れたけれども、トマトのお尻のところが腐ってしまう『尻腐れ』を起こしてしまったものもいくつかあったし、畝に水がたまり、水分が多すぎて実が割れてしまうものもあった。

オクラも肥料が少なかったのか、生育が遅く、実の付きも悪かった。

「水の管理をちゃんとしておけばよかった。様子を見ながら肥料ももっとまけばよかった。」

そして、私が愛してやまないエダマメ。

「エダマメんしか勝たん」とか言って喜んでいたけれども、今年、もうまもなく収穫という時期に、いくつかのエダマメが畑を徘徊する動物に食い荒らされてしまった。

どうもエダマメの実の付き方がおかしいと、株の根元をのぞいてみると、さやがいくつも散らばっている。丁寧に豆の部分だけをほじくりだし、さやだけを残して食べ散らかした跡が畝のあちこちにあったのだ。

ネズミか?イタチか?それとも最近目撃情報のあったハクビシンか?

とにかく、一番おいしい時期を狙って、私のいない間にエダマメパーティを開いていたのだ。

美味しかっただろう、楽しかっただろう。でも……悔しい!

期待に胸を膨らませていたエダマメパーティへの思いはついえてしまった。

動物の被害に遭ったのはエダマメを育てはじめて初めてのことだった。想定外の出来事に、ただただ茫然とするしかない。

耕運機を動かしながら一人思い出しては、怒りの感情が湧いてくる。

「もっとしっかりとエダマメのことを見守っていれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに」

そう思うと、悔しさに涙があふれてくる。

(2021.09.03:コラム/遠藤洋次郎)