夏野菜の収穫が終わると、今度は冬野菜の収穫に向けての準備がスタート。
野菜作りをしていく一連の作業の中で、実はこの準備をしている時間が一番楽しい。
もちろん、できた野菜を手に取って「こんなに採れた!」「大きいのが採れた!」と喜ぶ瞬間も楽しいけれども、なんにも植えられていない土の上に肥料をまいたり、忘我の境地で耕運機を動かしたり、苗床で苗を育ててみたり。そんな作業をしている時間が楽しい。
20キロもある肥料の袋を抱えながら畑を移動するのは大変だけれども、気候も穏やかになったこの時期に、うっすら汗ばむくらいの肉体労働がかえって心地よかったりする。
耕運機をかけているときの、あの『忘我の境地』は日常のモヤモヤを忘れさせてくれる時間。頭の中をカラッポにして、ただただ土と向き合う。余計なことは考えなくていい。日頃のストレスも発散できる。秋風が頬を撫でていくのも心地が良い。
そして苗床に、今はハクサイとタマネギなどの苗を育てている。
育苗トレイに土を入れ、トレイの中に一粒ずつ種を入れていく。早いものだと4日後くらいには芽を出してきて、
「お!芽が出てきた!あ、こっちの穴からも芽が出て来てる!」
と、ちょっとした感動を覚えながら水をやる。小さな芽はなんとも可愛らしくて癒される。
畑の準備が整い、マルチがけをして様々な野菜の種をまいていく。そして苗床で育った苗も畑に植え替えていく。
さぁ、これで冬野菜の準備は終了。ダイコンやハクサイは11月くらいに取れるかな?タマネギやニンニクはひと冬こえて、来年の春になったら美味しくできているかな?そう思うとどうしたわけか、楽しいと思っていた気持ちが急にしぼんでいく。いわゆる『仕込み』の作業が終わると、そこで気持ちが萎えてしまうのだ。
あとは、伸びてくる雑草を刈っていかなきゃならない。葉っぱに着く虫の対策もしっかりとしなければならない。様子を見ながら肥料も追加していかなきゃならない。天気予報を見ながら、晴れの日は水をまきにいかなきゃならない。
農家さんの大変なことは、実は種をまいてからの日々なのだ。
先日、「種をまくまでは楽しいんだけど、そこから先はどうもやる気にならない」
と妻に言ったら、
「それって、やることだけやって、子どもができたら育児放棄するダメ夫と一緒だね」
と言われた。
はい。ごもっとも。子どもも野菜も、大事に育てていくことにします。
(2021.09.17:コラム/遠藤洋次郎)